チベット仏教・「シュクデン」崇拝問題から考える






2010年10月19日(Tue)
チベット仏教・「シュクデン」崇拝問題から考える
仏教考察は少しお休みさせて頂いております・・

さて、松本史朗氏の「批判宗学」・「批判仏教学」・「如来蔵(仏性)思想批判」の視座につきまして、これまで私なりに考察して参りました。もちろん、まだまだこれからでございますが、現時点におきましては、『「批判的合理主義」・「空のニヒリズム主義」による「徹底した自己否定」・「絶対的一元論の否定」・「絶対的存在・実在の否定」・「神秘主義の否定」・「盲目的信仰・崇拝の否定」・「密教の否定」・「呪術・マントラ・迷信の否定」といったものを挙げることができる』と述べさせて頂いております。

松本氏の視座によりますと、チベット仏教を教学的に大成し、ゲルク派を開基したツォンカパ論師の思想につきましても、最終的には如来蔵思想を脱却できずにやがて密教へと傾注してゆくこととなったことを論著内において批判的に述べられています。

つまり、チベット最大の宗派としてその後発展していったゲルク派が奉じている「密教」的な教義におけるところも当然に松本氏にとっては、批判対象となるわけであります。

もちろん、顕密仏教・体制で強固に成り立っている現代チベット仏教において、密教的要素を完全に取り除くことは恐らくほぼ不可能でありますでしょう。

ただ、このあたりのところで、現在のゲルク派の最高指導者であるダライ・ラマ14世師が、カルト・セクト主義色の強いとされる「シュクデン」崇拝を禁止するに至った経緯は、チベット仏教史上においても非常に重大な出来事であると言えるでしょう。

しかしながら、ダライ・ラマ14世師が、禁令したものの、「シュクデン」崇拝はチベット仏教内において相当な影響力を占めており、無くなるどころではなく、信奉者はゲルク派内でも圧倒的な多数を占めているとされ、また、「ニュー・カダンパ・トラディション」といった、チベット仏教から独立した国際宗教団体が活動を広げているなど、今後も「シュクデン」崇拝問題は、どのように展開していくのかは、非常に注視の必要があります。

「シュクデン」崇拝問題は、チベット仏教の今後、ダライ・ラマ14世師の活動の今後の展開においても、まさに「アキレス腱」になりかねないといったところではないかと恐れ多くも察する次第でございます。

とにかく、松本氏の視座から考えますと、現在に至るまでのチベット仏教の様々な歴史的経緯を察するに、純粋な顕教における「中観思想」の理解だけでは留まらず、「密教」を受容していったことは、「ある意味で残念至極であった」ということになりますでしょうか・・

私が仏教考察を少しお休みさせて頂いておりますのも、ツォンカパ論師の中観思想を学ぶ意欲がやや減退してきてしまっていることも少なからず影響しています・・もちろん、松本氏の論著の学びを進めていくことで、ある種の失望は自身も予測していたことではありますが・・

最後に「チベット仏教哲学・松本史朗著・大蔵出版」の第10章「ツォンカパと離辺中観説」p390から、以下の文章を抜粋しておきます・・

抜粋開始・・

「ツォンカパが、"最高の実在は不可説であるから、一切の言葉・分別・判断・主張はもっぱら否定されなければならない"という実在論的仏教理解を根底から否定したことの意義は、革命的なものと言えようが、"縁起"("世俗有の主張")か、"空"("勝義無の主張")かを二者択一的に問うたとき、ツォンカパの議論の力点が後者に置かれていたことは否定すべくもないであろう。ツォンカパが、"仏教には主張がある"と力説したことは、仏教を明確な"哲学"として確立しようとしたことを意味する。しかし、そのツォンカパにとっての仏教の"主張""哲学"が、"縁起"ではなくて"空"という否定的なものであったということが、彼の思想から深刻さを奪い、結果的には"縁起"とは全く矛盾する"dha(_)tu-va(_)da"にもとづく密教を自ら許容する余地を生じることになったのである。」

・・抜粋ここまで。

・・

前回にダライ・ラマ14世師の属しておられるチベット仏教最大の宗派・ゲルク派における内部問題として、「シュクデン」崇拝問題を挙げさせて頂きました。

あまりご存じでない方も多いかと存じますので、「シュクデン」崇拝問題とはどういうものであるのかについてWikipediaに詳しく記載されておりますので、ご参照頂けましたらと思います。

「シュクデン」 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%AF%E3%83%87%E3%83%B3

・・

ダライ・ラマ14世師と毛沢東・中国初代国家主席との会談について考える
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51776609.html

「道元思想論・松本史朗著・大蔵出版」を一読して・6-7
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51774538.html

「道元思想論・松本史朗著・大蔵出版」を一読して・5
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51773161.html

余談「批判的思考の必要性について・1」
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51772472.html

「道元思想論・松本史朗著・大蔵出版」を一読して・4
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51771197.html

「道元思想論・松本史朗著・大蔵出版」を一読して・1-3
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51770905.html

「禅思想の批判的研究・松本史朗著・大蔵出版 」を一読して
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51769465.html

ツォンカパ論師の中観思想を学ぶ意義4-5
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51768858.html

ツォンカパ論師の中観思想を学ぶ意義1-3
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51766505.html

「非有・非無の中道」について
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51764526.html

「縁起賛」・「ラムツォ ナムスム(道の三要訣)」・「四つの捕われから離れる秘訣」
http://blog.goo.ne.jp/hidetoshi-k/m/197611

「蟻の瓶と象の瓶」齋藤保高氏
http://rdor-sems.jp/index.php?%E8%9F%BB%E3%81%AE%E7%93%B6%E3%81%A8%E8%B1%A1%E3%81%AE%E7%93%B6

教理の考察「蟻の瓶と象の瓶」(齋藤保高氏)・感想1-3
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51749171.html

チベット仏教ゲルク派 宗学研究所
http://rdor-sems.jp/
ポタラ・カレッジ 齋藤保高氏の個人サイト

「苦楽中道説について」
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51739221.html

「苦楽中道説について」補足
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51746333.html

中観帰謬論証派の学びのススメ
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51597159.html

mixiコミュニティ「仏教・中観思想・空思想を学ぶ」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=4629752

仏教・学びの進捗状況全般参照
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第四弾

「中論―縁起・空・中の思想(上・中・下)」三枝充悳著 レグルス文庫
「大乗仏典14 龍樹論集」 中央公論新社
「講座 大乗仏教7 中観思想」春秋社
「講座 大乗仏教9 認識論と論理学」春秋社
「講座 仏教思想1 存在論・時間論」理想社
「講座 仏教思想2 認識論・論理学」理想社
「チャンドラキールティの中観思想」岸根敏幸著・大東出版社
「ツォンカパの中観思想―ことばによることばの否定」四津谷孝道著・大蔵出版
「ツォンカパ 中観哲学の研究1」
「ツォンカパ 中観哲学の研究2」
「ツォンカパ 中観哲学の研究3」
「ツォンカパ 中観哲学の研究4」
「ツォンカパ 中観哲学の研究5」
「般若経釈 現観荘厳論の研究」兵藤一夫著 文栄堂
「ダライ・ラマ 般若心経入門」ダライ・ラマ14世著、宮坂宥洪翻訳・春秋社
「ダライ・ラマの仏教哲学講義―苦しみから菩提へ」
 テンジンギャツォ著・TenzinGyatso原著・福田洋一翻訳・大東出版社
「チベット仏教成就者たちの聖典『道次第・解脱荘厳』解脱の宝飾」
 ガムポパ著・ツルティム・ケサン、藤仲 孝司共訳 UNIO
「心の迷妄を断つ智慧―チベット密教の真髄」
 チュギャム トゥルンパ著・宮坂宥洪訳
「チベット密教 修行の設計図」
 斎藤保高著・春秋社
「チベット密教 心の修行」
 ゲシェー・ソナム・ギャルツェン ゴンタ著、藤田省吾著 法蔵館
「チベット仏教 文殊菩薩(マンジュシュリ)の秘訣」
 ソナム・ギャルツェン・ゴンタ著 法蔵館
『ダライ・ラマの「中論」講義―第18・24・26章 』
 ダライラマ14世テンジンギャツォ著・マリアリンチェン翻訳 大蔵出版
「悟りへの階梯―チベット仏教の原典『菩提道次第論』」
 ツォンカパ著・ツルティムケサン翻訳・藤仲孝司翻訳 UNIO
『「空」の構造 -「中論」の論理』立川武蔵著・第三文明社
「縁起と空 如来蔵思想批判」松本史朗著・大蔵出版
「チベット仏教哲学」松本史朗著・大蔵出版
「禅思想の批判的研究」松本史朗著・大蔵出版
「道元思想論」松本史朗著・大蔵出版
「法然親鸞思想論」松本史朗著・大蔵出版
「仏教思想論 上」松本史朗著・大蔵出版
「法華経思想論」松本史朗著・大蔵出版

施本シリーズ

施本「仏教・縁起の理解から学ぶ」
http://oujyouin.com/enginorikai.html
施本・「仏教・空の理解から学ぶ」
http://oujyouin.com/topengi.htm
施本「仏教・空の理解」
http://oujyouin.com/sunyatop.htm
施本「仏教 〜 一枚の紙から考える 〜」
http://oujyouin.com/buddhism1p.html
施本「佛の道」
http://oujyouin.com/hotokenomichi.html

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第三弾

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第二弾

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第一弾


   





カレンダ
2010年10月
         
19
           

アーカイブ
2008年 (187)
5月 (17)
6月 (30)
7月 (32)
8月 (31)
9月 (30)
10月 (20)
11月 (3)
12月 (24)
2009年 (175)
1月 (26)
2月 (20)
3月 (20)
4月 (8)
5月 (18)
6月 (4)
7月 (17)
8月 (9)
9月 (27)
10月 (23)
11月 (2)
12月 (1)
2010年 (62)
1月 (8)
2月 (3)
3月 (3)
4月 (1)
5月 (4)
6月 (7)
7月 (6)
8月 (1)
9月 (13)
10月 (8)
11月 (6)
12月 (2)
2011年 (49)
1月 (7)
2月 (4)
3月 (4)
4月 (4)
5月 (5)
6月 (6)
7月 (2)
8月 (4)
9月 (3)
10月 (3)
11月 (5)
12月 (2)
2012年 (39)
1月 (4)
2月 (8)
3月 (1)
4月 (2)
5月 (1)
6月 (1)
7月 (2)
8月 (2)
9月 (4)
10月 (2)
11月 (7)
12月 (5)
2013年 (25)
1月 (3)
2月 (2)
3月 (1)
4月 (1)
5月 (5)
6月 (1)
7月 (2)
8月 (4)
9月 (2)
10月 (1)
11月 (2)
12月 (1)
2014年 (44)
1月 (3)
2月 (3)
3月 (2)
4月 (5)
5月 (4)
6月 (11)
7月 (4)
8月 (3)
9月 (3)
10月 (1)
11月 (3)
12月 (2)
2015年 (59)
1月 (1)
2月 (2)
3月 (5)
4月 (8)
5月 (6)
6月 (3)
7月 (7)
8月 (11)
9月 (4)
10月 (3)
11月 (5)
12月 (4)
2016年 (34)
1月 (3)
2月 (3)
3月 (5)
4月 (1)
5月 (1)
6月 (4)
7月 (3)
8月 (3)
9月 (5)
10月 (1)
11月 (4)
12月 (1)
2017年 (11)
1月 (4)
2月 (2)
3月 (2)
4月 (1)
5月 (2)

アクセスカウンタ
今日:461
昨日:1,754
累計:752,138