「四つの捕われから離れる秘訣」サパン大師






2010年09月06日(Mon)
「四つの捕われから離れる秘訣」サパン大師
前回にツォンカパ論師「ラムツォ ナムスム(道の三要訣)」をご紹介させて頂きましたが、続きまして、同じく仏道修行の実践へ向けまして重要な内容が扱われております、サパン大師「四つの捕われから離れる秘訣」もご紹介させて頂きたく存じます。解説は「ラムツォ ナムスム」と同様に出典の「チベット仏教 文殊菩薩の秘訣 ゲシュー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ解説 法蔵館」に詳しくなされております。是非、ご参照下さいませ。

「四つの捕われから離れる秘訣」サパン大師

聖なる師の御足に礼拝致します。

世間的には有暇具足の身体を得た。宝なる仏陀の教えに出会い、作意ではない心を起こし、今、錯誤のない修行をしなければならない。それにおいては、「四つの捕われ」から離れるための実践をすべきである。

それが何であるかと言えば、「第一に」今生に捕われないこと。「第二は」三界の輪廻に捕われないこと。「第三に」自身の利益に捕われないこと。「第四に」事物や相(現象、あるいは状況)に捕われないこと。

これらについて述べるなら、

今生は水の泡のようなもの
いつ死が訪れないとも限らず
永続するものと捉えてはならない

この三界の輪廻は
毒をもつ果実のようなもの
一時的には美味であるが
将来的には害をもたらす
それに捕われる誰もが誤りを犯す

自身の利益に捕われるのは
敵対者の息子を育てるようなもの
一時的には歓びであっても
究極(将来)的に自身に害をもたらすことが決定している

それゆえ、自身の利益に対して捕われたとしても
一時的に幸せでも、究極(将来)的には三悪趣に墜ちる

事物と相(現象、あるいは状況)に捕われるのは
蜃気楼の水(逃げ水)に捕われたようなもの
それゆえ、一時的には出現するが
口にすることはできない

誤った意識に、この輪廻が現われても
智慧によって分析すれば
実体は一つとしてない

それゆえ、過去には心がなく、未来にも心はない
現在においても、心はないというように理解し
一切法(すべての存在)に対しては分別から離れることを知るべきである

そのようにすれば、今生に対して捕われることがなく
三悪趣に生まれることがない
三界の輪廻に捕われることがなく
輪廻に生まれることがない

自身の利益に捕われることがなく
声聞や縁覚に生まれることがない
事物や相(現象、あるいは状況)に捕われることがなく
素早く確実に正等覚(覚り)を得る。

(和訳 藤田省吾氏 参照「チベット仏教 文殊菩薩の秘訣 ゲシュー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ解説 法蔵館 2004」p153-156)

・・

以前に、仏教最大の真理要諦である「深遠なる縁起の理法」を賛嘆なされたツォンカパ論師の「縁起賛」につきまして載せさせて頂きました。この度は、修行の要訣である「出離」・「菩提心」・「正見」についてツォンカパ論師が端的にご説明なされている「ラムツォ ナムスム(道の三要訣)」をご紹介させて頂きます。仏教を学ぶ者にとっては欠かせない大切な修行実践へといざなわせる重要な内容でございます。解説は出典の「チベット仏教 文殊菩薩の秘訣 ゲシュー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ解説 春秋社」に詳しくなされております。是非、ご参照下さいませ。

「ラムツォ ナムスム(道の三要訣)」

至尊の諸上師に頂礼し奉る。

勝者(仏陀)のあらゆるお言葉の心髄の義、
正しき仏子(菩薩)らが賛嘆する道、
解脱(迷いと苦しみから完全に解放されること)を欲する有縁の者たちが
船出する波止場に喩うべき
それ(「道の三要訣」)を、私ができるだけ説き明かそう。

輪廻(迷いと苦しみの世界)の幸福に執着せず、
有暇具足(仏道修行に適した境遇)を無駄にせぬよう
精進(努力)することによって、
勝者のお喜びになる道を信奉する
有縁の者たちは、清らかな心をもって聴聞せよ。

清浄なる出離がなければ、
輪廻の苦海に幸福の果実を追い続け、
それを鎮める方便(手段)はない。
輪廻に愛着する煩悩で、
有情(あらゆる生き物)らは悉く束縛されているため、
最初に出離を追求すべきだ。

有暇具足は得難く、
しかも一生は瞬く間に過ぎ去ると
心で習熟することにより、
今生の些事への執着はなくなるだろう。

因果が偽らずに応報する輪廻のさまざまな苦しみを
再三にわたって思うならば、
後生(来世)の些事への執着もなくなるだろう。

そのように習熟することで、
輪廻の栄華を願う心など一刹那たりとも起こらず、
昼夜を通じていつも解脱を追求する智慧の生じたそのときこそ、
出離が起きたのである。

その出離も、
清浄な発心(菩提心)で支えなければ、
無上菩提(仏陀の覚り)の円満な楽を得る因とならぬゆえ、
智慧者らは優れた菩提心を発するのだ。

恐るべき四暴流(欲望や無知などの煩悩)に押し流されて、
避け難い業の堅固な束縛に身動きもならず、
我執という鉄の網に囲まれて、
無明(無知)の闇の果てしなき暗黒に覆い尽くされている・・

無辺の輪廻に生まれかわりを繰り返し、
三苦(普通の苦しみ、変化する苦しみ、普遍的苦しみ)に絶え間なく苛まれ、
今なおこのようになっている母〔なる一切衆生(生きとし生けるものすべて)〕の
ありさまを思いやり、
それから最勝心(菩提心)を発し給え。

真理を了解する般若(智慧)を具えなければ、
出離や菩提心に習熟したとて
輪廻の根を断ち切ることはできないので、
そのために縁起(あらゆる存在が他に依存して成立すること)を了解する方便を
尽くすよう努めるべきだ。

輪廻と涅槃(迷いと苦しみから解放された世界)の
諸法(さまざまな存在)一切の因果は常に偽らぬと観じつつ、
縁ずる依処(実体として認識される対象)は何であれすべて滅したとき、
それこそ仏陀がお喜びになる道へ入ったのである。

顕現(現われたこと)の因果に偽りがないことと、
空(あらわる実在に実体がないこと)を認めるという、
これら二つの離れた理解が個別に現われている間は、
未だ牟尼(釈尊)の密意(真意)を了解していない。

いつか交互にではなく同時に、
縁起に偽りのないことを観じるのみで
信念をもって境の執し方(対象を実体として把握する習慣)をすべて滅するなら、
そのときこそ見解の伺察(分析)は究竟するのである。

さらに、顕現(に実体がないこと)をもって
有の辺(存在に実体性を認めるという極端論)を排し、
空〔であるものが幻のごとく現われること〕をもって
無の辺(存在が全くの無だという極端論)を排し、
このように空性が因や果として現われる道理を知るならば、
辺執見(極端論に執着する見解)に捕われなくなるだろう。

そのように
「道の三要訣」の諸要点を自ら如実に了解したときは、
寂静処へ身を寄せて精進の力を発揮し、
究極のめざす境地を速やかに成就せよ。

我が子(弟子)へ・・

この教誡は、多聞の比丘ロサン・タクペー・ペル(ツォンカパ大師)が、ツァコ・プンポ・ガワン・タクパに授けたものである。

(和訳 齋藤保高氏 参照「チベット仏教 文殊菩薩の秘訣 ゲシュー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ解説 法蔵館 2004」p5-10)

・・

ここ数日で、最近アマゾンで購入したダライ・ラマ14世師の亡命までの前半生を描いた映画「クンドゥン」とダライ・ラマ14世師の亡命生活の様子を描いたドキュメンタリー映画「サンライズ/サンセット」を観ることができました。

両者共に非常に色々と考えさせられる内容であります。特に後者におけるダライ・ラマ14世師の法話においては、チベット仏教哲学を学ぶ上でもかなり重要な内容が、誠に時間短い中ながらも扱われておりました。この二本は、「リトル・ブッダ」と「セブン・イヤーズ・イン・チベット」と共に是非とも皆様に観て頂きたいお薦め映画であります。

「講座 仏教思想1 存在論・時間論」の再々読中。

・・

教理の考察「蟻の瓶と象の瓶」(齋藤保高氏)・感想1-3
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51749171.html

チベット仏教ゲルク派 宗学研究所
http://rdor-sems.jp/
ポタラ・カレッジ 齋藤保高氏の個人サイト

「蟻の瓶と象の瓶」齋藤保高氏
http://rdor-sems.jp/index.php?%E8%9F%BB%E3%81%AE%E7%93%B6%E3%81%A8%E8%B1%A1%E3%81%AE%E7%93%B6

ツォンカパ論師「縁起賛」について
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51729905.html

「苦楽中道説について」
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51739221.html

「苦楽中道説について」補足
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51746333.html

中観帰謬論証派の学びのススメ
http://blog.livedoor.jp/hidetoshi1/archives/51597159.html

mixi「仏教・中観思想・空思想を学ぶ」のコミュニティでは、かなり熱く深い議論が展開されておりまして、少しずつですが有意義なコミュニティへとなりつつあります。私は忙しさにかまけてしまい、論考コメントが少なくなってしまっていますが、何とか盛り返していければと考えています。

現在、mixiにて「仏教・中観思想・空思想を学ぶ」のコミュニティを運用させて頂いております。現在、mixiは、既に招待制度を廃止し、誰でも自由に加入できるようになっています。

「仏教・中観思想・空思想を学ぶ」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=4629752

仏教最高峰の論理学・中観思想・・龍樹(ナーガールジュナ)論師以来の「中観思想・空思想」の発展について全般的な学びを進めていくために、色々と論題を設けて、意見交換・討議を行って参りたいと存じております。ご興味のある方は是非ご参加下さいませ。

仏教最大の要諦「縁起」の理法・・増益(過剰肯定)と損減(過剰否定)を離れて、「縁起」のありようを理解することが仏教最大の一大事であります。これが非常に難しい・・特に「世俗諦」と「勝義諦」の「二諦」の解釈の難しさとも通じるところであります。とにかく、ツォンカパ論師の中観思想の学びを更に進めて参りたいと存じます。

・・

集中的に再読していく論著集

「講座 大乗仏教7 中観思想」春秋社
「講座 大乗仏教9 認識論と論理学」春秋社
「講座 仏教思想1 存在論・時間論」理想社
「講座 仏教思想2 認識論・論理学」理想社
「大乗仏典14 龍樹論集」 中央公論新社
「チベット仏教哲学」松本史朗著・大蔵出版
「チャンドラキールティの中観思想」岸根敏幸著・大東出版社
「ツォンカパの中観思想―ことばによることばの否定」四津谷孝道著・大蔵出版
「ツォンカパ 中観哲学の研究1」
「ツォンカパ 中観哲学の研究2」
「ツォンカパ 中観哲学の研究3」
「ツォンカパ 中観哲学の研究4」
「ツォンカパ 中観哲学の研究5」
「般若経釈 現観荘厳論の研究」兵藤一夫著 文栄堂
「ダライ・ラマ 般若心経入門」ダライ・ラマ14世著、宮坂宥洪翻訳・春秋社
「ダライ・ラマの仏教哲学講義―苦しみから菩提へ」
 テンジンギャツォ著・TenzinGyatso原著・福田洋一翻訳・大東出版社
「チベット仏教成就者たちの聖典『道次第・解脱荘厳』解脱の宝飾」
 ガムポパ著・ツルティム・ケサン、藤仲 孝司共訳 UNIO
「心の迷妄を断つ智慧―チベット密教の真髄」
 チュギャム トゥルンパ著・宮坂宥洪訳
「チベット密教 修行の設計図」
 斎藤保高著・春秋社
「チベット密教 心の修行」
 ゲシェー・ソナム・ギャルツェン ゴンタ著、藤田省吾著 法蔵館
「チベット仏教 文殊菩薩(マンジュシュリ)の秘訣」
 ソナム・ギャルツェン・ゴンタ著 法蔵館
『ダライ・ラマの「中論」講義―第18・24・26章 』
 ダライラマ14世テンジンギャツォ著・マリアリンチェン翻訳 大蔵出版
「悟りへの階梯―チベット仏教の原典『菩提道次第論』」
 ツォンカパ著・ツルティムケサン翻訳・藤仲孝司翻訳 UNIO
『「空」の構造 -「中論」の論理』立川武蔵著・第三文明社

施本シリーズ

施本「仏教・縁起の理解から学ぶ」
http://oujyouin.com/enginorikai.html
施本・「仏教・空の理解から学ぶ」
http://oujyouin.com/topengi.htm
施本「仏教・空の理解」
http://oujyouin.com/sunyatop.htm
施本「仏教 〜 一枚の紙から考える 〜」
http://oujyouin.com/buddhism1p.html
施本「佛の道」
http://oujyouin.com/hotokenomichi.html

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第三弾

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第二弾

これから更に仏教の学びを進めるための文献・第一弾


   





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